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日立製作所(東京都千代田区)、井関農機(愛媛県松山市)、岩見沢市は1月25日、日立が開発した可搬AC・DC併用バッテリーを活用し、自立型ナノグリットで得た再生可能エネルギーを地域で循環させる実証試験を開始したと発表した。
農業のほか、地域産業支援・災害時に活用も
日立は、太陽光パネルから得られるDC電流をそのまま急速充電できる着脱・可搬のAC/DC併用バッテリーを試作。このバッテリーを井関農機が提供する電動農機に搭載することで、農繁期に自立型ナノグリッドから得られた再生可能エネルギーを農業に活用する。
農閑期にはバッテリーを着脱し、ナノグリッドや電気機器に活用することで、岩見沢市内に分散する電力系統未接続の地域産業への支援や、臨時のEV急速充電スタンドなどのインフラに供給し地域生活を支援する計画。再生可能エネルギーの地産地消を促進する。

電動農機に搭載し、地域にエネルギーを供給可能な可搬AC/DC併用バッテリ(出所:日立製作所)
2021年に自立型ナノグリットを設置
自立型ナノグリッドとは、太陽光や温泉付随ガスなどを活用した自前のエネルギー供給源を持つことで、エネルギーの地産地消を可能にする小規模な電力システムのこと。
日立は、北海道大学(札幌市)や岩見沢市との協創により、2021年に市内の北村赤川鉱山施設に自立型ナノグリッドを設置し、太陽光と温泉付随ガスを燃料とした地産地消エネルギーシステムの実証試験を行っている。
この取り組みの中で、自立型ナノグリッドから市内に広域に分散する作業地まで、必要なエネルギーを低コストで供給する仕組みが課題となっていた。
今回の実証試験では、同社の充放電計画最適化技術を用いて、充電済バッテリーを適切な時期に適切な作業地へ供給し、年間を通じたバッテリの有効活用の検討に取り組む。

可搬AC/DC併用バッテリを用いた地産地消エネルギーの地域利活用拡大のイメージ(出所:日立製作所)
充放電計画最適化技術で運用を効率化
同技術は、シミュレーション環境を構築することで、バッテリー容量や運搬のための車両台数、自立型ナノグリッドの発電能力などの設備情報、分散された農地の電力需要データ、日射量に基づく発電量の不確実性などの情報を収集。これらのデータを用いて、農地での電力ピークカットなどに合わせた電力供給達成率や費用削減効果などが最大となる複数バッテリの充放電計画を提示する。
これにより、システム全体への投資計画や、分散された農地へのバッテリー配送ルート、余剰電力活用や農地での電力ピークカットに合わせたバッテリーの供給時刻、自立型ナノグリッドでのバッテリーにおける充電タイミングなど、最適なバッテリ運用計画の立案が可能となるという。
今後、日立と岩見沢市は、同市を実証フィールドとし、一次産業の大規模経営が進む地域へ同技術の導入を推進し、作業車両の電動化を通じて、燃料高騰の影響軽減や地域産業の脱炭素化に貢献していく。