環境省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、気象庁の5省庁は2月16日、日本を対象とした気候変動の観測・予測・影響評価に関する知見を取りまとめたレポート「気候変動の観測・予測・影響評価に関する統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~」を作成し、レポートの概要をまとめたパンフレットと合わせて公表した。
このレポートは、さまざまな自然システムが気候変動による影響を受けつつある中で、主に日本を対象として、国や地方の行政機関、国民が気候変動への対策を考える際に役立つ、最新の科学的知見を提供することを目的としたもの。
2018年版のレポートでは、観測結果に基づく気候変動の現状と将来の予測結果について、2013年の統合レポート公表後に得られた最新の知見を盛り込むとともに、気候変動により現在生じている影響、将来予測される影響についての記述を大幅に拡充している。これにより、気候変動への適応策を考える際に役立つ資料になっている。
具体的な変化・影響を分野別に詳細レポート
このレポートは、
- 気候変動のメカニズム
- 気候変動の観測結果と将来予測
- 気候変動による影響
の3章で構成されており、それぞれについて詳細な解説が述べられている。
とくに、第3章の「気候変動による影響」では、日本における気候変動の影響とそれに対応した取り組みが、分野別に細かく紹介されている。
具体的には、農業、森林・林業、水産業をはじめ、水環境・水資源、自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活や都市活動において、気候変動によりどのような影響が生じているのか、あるいは今後生じる可能性があるのかを丁寧に記述している。
気温上昇に合わせた新たな作物導入も
また、気候変動に対応した取り組みとしては、例えば農業分野では、気温の上昇によって新たに栽培できるようになる亜熱帯・熱帯作物の導入や転換、産地の形成など、温暖化に対応した取り組みなどを紹介している。愛媛県の南予地域で、夏場の高温にも強いブラッドオレンジの一つである「タロッコ」を導入したケースもそのひとつだ。
さらに、気候変動を見据えた「適応ビジネス」の動きとして、農業支援サービスや災害リスクを予測・評価するサービス、屋外作業員の熱ストレスを管理するサービスなどICT技術を活用したサービスの提供、建物や居住空間の暑熱環境・快適性を向上させる技術や、異常気象による損害を補償する天候デリバティブなどの金融商品を扱ったビジネスなどが展開されていることが紹介されている。
なお、同レポートの全文と概要をまとめたパンフレットは、環境省HPにてダウンロードできる。