
Azuri社のSHSキット
丸紅(東京都千代田区)は6月3日、アフリカの未電化地域でソーラーホームシステム(SHS)販売事業を手がける、英国のAzuri Technologies(Azuri社)への出資を通じて、同地域におけるこのシステムの販売事業に参画すると発表した。また、同社は、5月23日に出資参画に関わる投資契約書をAzuri社と調印したこと、それによりAzuri社の筆頭株主となる予定であることも発表した。
なお、Azuri社のSHSは、一般住宅向けに太陽光発電パネル、蓄電池、照明、ラジオなどをセットにしたものだ。
モバイル決済(プリペイド)でサービス提供
Azuri社は、ケニアやタンザニア連合共和国など、アフリカ諸国の未電化地域でSHS事業を展開している。
同社のSHS事業は、スマートフォンや携帯電話を使った「モバイルペイメント」により、前払いをした分だけサービスの提供が受けられる「Pay-as-You-Go方式」による割賦販売を活用する。
その上で、未電化地域の一般住宅に太陽光発電パネル、蓄電池、LEDライト、ラジオ、テレビと約60チャンネルの衛星放送視聴権一式(SHSキット)を提供する。
未電化地域に明かりを灯し、夜間の仕事や勉強など、様々な活動を可能とするとともに、テレビやラジオを通じて、世界の情報へのアクセスも提供する。
さらに、このSHSキットは、各顧客の電力使用パターンを機械学習し、天候や蓄電残量に応じて自動でライトやテレビの輝度を調整、バッテリー切れによる停電を回避することができる。この「HomeSmart™」と呼ばれる技術を独自開発し保有していることが、Azuri社の強みのひとつとなっている。

SHSキットを使用している様子
タンザニアでは雑貨店でLEDランタンのレンタル
また、2018年9月に丸紅は、WASSHA(ワッシャ社)へ出資参画し、タンザニアの未電化地域にて、地域電化に寄与する地域密着型電源事業を開始することも発表した。タンザニアは総人口の約76%の未電化人口を抱え、全世界で未電化地域に住む人口は約11億人とされている。
ワッシャ社の事業は、タンザニアの地域密着型日用品・雑貨店(キオスク)に対し、太陽光発電パネル・充電関連機器・充電式LEDライト(ランタン)の無償貸出・充電権利の販売を行い、太陽光発電にて充電したランタンをキオスク経由で地域ユーザーにレンタルし、小分けした電力により地域電化に貢献するものだ。
銀行口座普及率が高くない未電化地域で、地域ユーザーとキオスクからのレンタル代金の回収を、携帯電話を用いたモバイルペイメントで行うことを特徴としている。
丸紅は、Azuri社とワッシャ社をプラットフォームとし、電力のみならず新たなサービスを供給し、未電化地域住民の電化、生活の質向上、情報格差是正という社会課題の解決への貢献を目指す。
住友商事、三井物産もアフリカでSHS事業に参入
国連が提唱する、2030年に向けた「持続可能な開発目標(SDGs)」や、環境や社会事業の取り組みを考慮したESG投資等の高まりを受けて、新たなビジネス展開も踏まえた、未電化地域に貢献する取り組みが増えてきている。
たとえば、住友商事(東京都千代田区)は2018年12月、アフリカでSHS事業を展開するM-KOPA Holdings(M-KOPA社/ケニア・ナイロビ)に出資参画、M-KOPA社への出資を通じて未電化地域の経済発展に貢献すると共に、新たな分散型電源事業へ参入すると発表した。
M-KOPA社のSHSは、家庭用の小型太陽光発電パネル・蓄電池に、照明やテレビなど家電を組み合わせた製品。SHSは、IoTやモバイル決済の技術を組み合わせて割賦販売を可能とした「Pay-as-You-Go方式」を採用する。
なお、三井物産(東京都千代田区)も2018年5月にM-KOPA社への出資参画に関する関連契約書を締結したことを発表している
一方、パナソニック(大阪府門真市)は2018年4月に、無電化人口の多いアジアやアフリカなどで、太陽光発電・蓄電システムなどの寄贈に加え、知識・技術の研修を通じた人材育成や電気を活用した地場産業モデルの開発支援などを行う「無電化ソリューションプロジェクト」を開始することを発表した。
これは社会貢献活動の一環として、同社の創業100周年を機に取り組むもので、無電化地域における教育基盤の確立と収入増に貢献し、コミュニティの自立を支援するとともに、SDGsの達成にもつなげていくことを目指している。